道徳授業を変える

漫言放語 №50

教師の価値観を深める

SDK代表 鈴木健二

 県の指定で道徳教育を研究することになったS中学校で講演した。

 一時間ほどの講演だったが、先生方の積極的に学ぼうとする姿勢が心地よかった。

 講演の終わりに次のような質問が出た。


□ 友情とか思いやりとかのテーマの場合には授業しやすいのですが、家族愛や郷土愛のテーマになると、授業するのが難しい感じがしています。どうしたらいいのでしょうか。


 「授業しにくい内容項目をどのように扱えばよいか」という質問は、あちこちの学校でよく出される。S中の質問には次のように答えた。

 家族愛や郷土愛について、自分自身がどうとらえているかを検討することが授業づくりの手がかりになる。まずは、家族愛とは何か、郷土愛とは何かについて、教師自身が価値観を深めることが大切だ。

 教師は、家族をどのように思っているのだろうか。家族一人ひとりに同じような家族愛を感じているのだろうか。もし家族愛に差があるとしたらその原因は何だろうか。このように、自分自身は、家族愛や郷土愛についてどのように考えているのかを問い直すことが授業づくりの手がかりになるのである。

 先日、次のようなコラムを読んだ(「天声人語」朝日新聞2023年6月1日)。


絵本『タンタンタンゴはパパふたり』は、オス同士のペンギンが恋をする物語だ。別のペンギンが放置した卵を、2羽は大事にあたためる。やがてタンゴが生まれると、3羽は家族になった。ニューヨークの動物園での実話が基になっている。


 この話から、家族とは何かについて、さまざまなことを考えさせられる。

① 卵を放置したペンギンが生みの親であるが、そのペンギンに対してタンゴは家族愛を感じることができるだろうか。

② まったく血の繋がっていない2羽のオスペンギンとタンゴは「家族になった」と書いているが、家族とは何なのだろうか。

③ 血の繋がった家族と比べて家族愛にちがいがあるのだろうか。

 このような問いに自分自身で答えようとすることによって、家族愛とは何かが少しずつ見えてくる。

 教師自身が価値観を深めることによって、授業しにくい内容項目の教材も授業づくりの手がかりがつかめるようになってくるのである。

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